【会計】過度な節税より“会社にお金を残す経営”を

「税金を払うくらいなら、経費を使って節税したい」

中小企業の経営現場ではよく聞く考え方です。

しかし、「とにかく節税!」を優先しすぎると、過度な節税によってキャッシュ(現預金)が社外へ流出し、結果として会社の資金力が弱くなってしまうケースは少なくありません。

そのときに確認したい企業の倒産リスクを示す重要な経営指標が、自己資本比率です。

自己資本比率の推移を見ることで、

  • 会社に利益が積み上がっているか
  • 財務体質が強くなっているか
  • 無理な節税で会社が弱っていないか

を客観的に把握できます。

自己資本比率が右肩上がりで推移している会社は、利益をしっかり残しながら、安定した経営基盤を築いている会社といえるでしょう。

自己資本比率とは?会社の“体力”を示す重要指標

自己資本比率をわかりやすく解説

自己資本比率とは、会社の総資産のうち、返済不要の自己資金がどれくらいあるかを示す指標です。

計算式は以下のとおりです。

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100

この比率が高いほど、

  • 財務基盤が安定している
  • 借入依存が少ない
  • 資金繰りに余裕がある

と評価されやすくなります。

特に金融機関は、融資判断の際に自己資本比率の推移を重視しています。

目安としては、30%以上あれば安定企業、50%以上あれば優良企業と考えられます。

同じ売上でも「自己資本比率」で会社の強さは大きく変わる

「売上が大きい会社=経営が安定している会社」と思われがちですが、実際にはそうとは限りません。

たとえ売上が同じでも、自己資本比率によって会社の“体力”や“経営の安定性”は大きく変わります。

ここでは、同じ売上規模の2社を比較しながら見てみましょう。

A社|自己資本比率47%の会社

財務状況

・資産の部

  • 現預金:2,500万円
  • 売掛金等:300万円
  • 在庫:200万円
  • 固定資産:4,000万円
  • 総資産:7,000万円

・負債・純資産の部

  • 借入金:3,000万円
  • 買掛金等:700万円
  • 資本金:300万円
  • 繰越利益剰余金:3,000万円
  • 自己資本(資本金+繰越利益剰余金):3,300万円
  • 負債・純資産合計7,000万円

自己資本比率:自己資本3,300万円 ÷ 総資産7,000万円 × 100 ≒47%

A社の経営状況

A社は、毎年しっかり利益を出し、利益剰余金を積み上げています。

その結果、

  • 現預金が増えている
  • 借入依存が低下している
  • 財務基盤が安定している

という状態です。

例えば、

  • 設備の入替
  • 新商品開発
  • 事業拡大
  • 人材採用

などにも前向きに投資しやすくなります。

また、万が一売上が落ちても、手元資金があるため、慌てずに経営判断ができます。

B社|自己資本比率5%の会社

・資産の部

  • 現預金:1,000万円
  • 売掛金等:1,000万円
  • 在庫:500万円
  • 固定資産:4,500万円
  • 総資産:7,000万円

・負債・純資産の部

  • 借入金:5,650万円
  • 買掛金等:700万円
  • 資本金:300万円
  • 繰越利益剰余金:50万円
  • 自己資本(資本金+繰越利益剰余金):350万円
  • 負債・純資産合計:7,000万円

自己資本比率:自己資本350万円 ÷ 総資産7,000万円 × 100 = 5%

B社の経営状況

B社も売上と利益はA社と同じです。

しかし、過去に、

  • 利益を残さない節税
  • 赤字経営
  • 借入依存

を続けてきた結果、自己資本がほとんど積み上がっていません。

そのため、

  • 借入返済負担が重い
  • 手元資金が少ない
  • 財務体質が弱い

という状態になっています。

例えば、借入返済額が毎月120万円ある場合、利益が出ていても、毎月の資金繰りに大きな負担がかかります。

売上が少し下がるだけで資金繰りが悪化する

例えば、原材料高騰や景気悪化で売上が10%減少した場合を考えてみましょう。

A社の場合

  • 売上:9,000万円
  • 利益減少あり
  • ただし手元資金2,500万円あり

A社は十分な手元資金を保有しているため、一時的な赤字が発生しても資金繰りに大きな影響を受けにくく、借入返済にも余裕を持って対応できます。また、業績回復に向けた投資や経営改善策を実行できるため、環境変化への対応力が高い企業といえます。

B社の場合

  • 売上:9,000万円
  • 利益大幅減少
  • 手元資金1000万円
  • 毎月120万円の返済継続

売上減少による利益の悪化が続くと、手元資金は徐々に減少し、資金繰りに余裕がなくなります。

また、自己資本が少ないため財務の安全性が低く、金融機関からの評価も厳しくなりやすい状況です。

その結果、追加融資の条件が厳しくなったり、設備投資や人材採用など将来の成長に向けた投資を控えざるを得なくなったりする可能性があります。

つまり、同じ売上でも、自己資本比率が低い会社は“環境変化に弱い会社”になってしまうのです。

「節税しすぎ」が会社を弱くすることもある

B社のような会社では、

「税金を払いたくないから利益を減らす」

という考え方を優先しすぎた結果、

  • 不要な経費使用
  • 過剰な設備投資
  • 利益を残さない経営

を続け、会社内部にお金が残っていないケースも少なくありません。

もちろん節税は重要ですが、

“税金を減らすこと”より、“会社にお金を残すこと”

の方が、長期的にははるかに重要です。

自己資本比率の推移は「会社の成長記録」

自己資本比率が毎年少しずつでも改善している会社は、

  • 利益を積み上げている
  • 財務体質が強くなっている
  • 借入依存が減っている

という状態であり、会社が着実に成長している証拠です。

逆に、売上があっても自己資本比率が低いままでは、資金繰り不安を抱え続ける経営になってしまいます。

マネイジブレーンでは、“会社にお金を残す経営”をサポート

税理士法人マネイジブレーン では、毎月の月次監査を通じて、

  • 利益状況
  • 納税予測
  • 資金繰り
  • 借入バランス
  • 自己資本比率の推移

を確認しながら、経営者に寄り添ったサポートを行っています。

単なる節税提案ではなく、

“会社にしっかりお金を残し、将来に備える経営”

を重視している点が特徴です。

「利益は出ているのに、お金が残らない」
「借入返済が重く、資金繰りが不安」
「自己資本比率を改善したい」

このようなお悩みがある方は、ぜひご相談ください。

リンク

金融庁:中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針

商工総合研究所:マクロ経済の動向と中小企業の財務